うつ病になるのは私のせい?|「自分のせい」と考える前に知ってほしいこと
by
Takaya Yoshinaka
2025/06/11
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本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。
「どうして自分がうつ病になったのか」「自分のせいなのか」と悩む声は、決して珍しいものではありません。うつ病の苦しみはとても個人的で深いものですが、医学的な視点から見ると、決してあなた一人の責任ではありません。この記事では、うつ病の本当の原因や、苦しみの現実、そして「前向きになれなくてもいい」という新たな視点を考えていきましょう。
うつ病とは?|誰にでも起こりうる「こころの病」
うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が続き、日常生活に支障が出る状態を指します。不眠や食欲の変化、強い疲労感、自責感などが現れることもあります。
うつ病は「気の持ちよう」や「甘え」ではなく、脳や心、環境が複雑に絡み合って起こる病気です。誰にでも起こりうるものであり、決して特別なことではありません。
うつ病の原因|「自分のせい」ではない理由
医学研究では、うつ病の原因は一つではなく、脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニン)のバランス異常や、脳の炎症、遺伝的な「なりやすさ」、ストレスや環境、性格傾向など、さまざまな要因が複雑に関わっていることがわかっています。
たとえば、仕事や人間関係のストレス、大切なものを失った経験、自分に厳しい性格、家族歴、季節の変化など、誰もが経験しうることがきっかけになることも。どれか一つが原因ではなく、いくつもの要素が重なって発症するのです。
苦しみの現実と「前向きになれない日」
うつ病の苦しみは、時に自分ではどうにもできないほど深いものです。治療や回復には時間がかかり、再発のリスクもあります。「前向きにならなきゃ」と思っても、気持ちがついてこない日もあるでしょう。
無理に自分を変えようとせず、「今の自分」をそのまま受け入れてみてください。これは、うつ病が脳や心の働き、ストレス、遺伝など複数の要因が重なって起こる病気であり、意志や努力だけでコントロールできるものではないからです。苦しんでいる自分を責めなくて大丈夫です。
人それぞれの回復のかたち|比べなくていい
うつ病の症状や回復のペースは人それぞれです。すぐに変化を感じる人もいれば、長い時間をかけて少しずつ進んでいく人もいます。他の人と比べて焦る必要はありません。あなたのペースで、あなたの感じ方を大切にしてください。
苦しみの中に生まれるもの|意味や変化は「あとから」でもいい
最近の研究では、うつ病を経験した人が、過去の出来事を新しい視点で捉え直したり、自己理解や他者への共感が深まったりすることがあると報告されています。
しかし、それは「今」感じられなくても大丈夫です。苦しみの中にいる時は、意味や成長を探そうとしなくてもいい。あとから振り返って気づけることもあります。
まずは「自分のせいじゃない」と知ってほしい
うつ病はあなたのせいではありません。個人の性格や努力だけで防げるものではないことがわかっています。
苦しみの現実を認めることは、無理に前向きになるよりもずっと大切です。今の自分をそのまま受け止めることで、心の負担が少し軽くなり、回復のきっかけをつかめる場合があります。焦らず、自分のペースで過ごすことが、長い目で見て自分らしい回復につながることもあります。
Reference
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