Trauma

Trauma

「みんなに嫌われている気がする」その感情の理解と向き合い方

by

Takaya Yoshinaka

2025/06/09

ファクトチェック済み

本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。

「周りから嫌われているのでは」と感じる瞬間は、誰にでも訪れるものです。職場や友人とのやりとり、SNSでの反応、ふとした沈黙。小さなきっかけで不安が心を占めることはありませんか。

そんなとき、自分が嫌われているのでは、と考えてしまう人もいるかもしれません。でも実は、この感情は「人とのつながりを大切にしたい」という優しさや繊細さの裏返しであることが多いのです。

不安はどこから生まれるのか

「嫌われている気がする」という不安はどこから生まれるでしょうか。「嫌われている気がする」という思いは、単なる思い過ごしだと片付けられるものではありません。心理学の研究では、自己肯定感の低下や過去の人間関係での傷つき体験が、不安を強める要因になることが分かっています。

また、「みんな」という言葉で一括りにしてしまう「過度な一般化」や、相手の反応を否定的に解釈しやすい傾向も指摘されています。こうした思考パターンは、私たちの脳が感情や記憶に強く影響されやすいという特性から生まれるものです。さらに、疲労やストレスがたまっているとき、人はより敏感に周囲の変化を受け取ってしまうこともあります。

「嫌われている」と感じたときの心の動き

「嫌われているかもしれない」と感じると、私たちは現実以上に孤立しているように思い込んでしまいがちです。しかし、その感情が強いときは、心が少し疲れているサインかもしれません。

まずは、「今、どんな思いがあるのか」「いつからこの不安が強くなったのか」と静かに自分に問いかけてみてください。自分の気持ちに気づくだけでも、少し心が落ち着くことがあります。

「みんな」ではなく「誰か」に

不安が強まると、私たちは「みんな」「いつも」といった言葉で物事を大きく捉えがちです。でも、実際に何があったのかを具体的に思い出してみると、違う景色が見えてくることもあります。

たとえば、「昨日、同僚があまり話しかけてくれなかった」「友人からのメッセージがなかなか返ってこなかった」など、身近な出来事が気になってしまうこともあるでしょう。それぞれの事情があるかもしれませんが、不安なときほど、こうした小さな変化に敏感になりやすいものです。少しだけ視点を変えて、「みんな」ではなく「誰か」「この場面」と考え直すことで、不安が和らぐこともあります。

ひとりで抱え込まない

不安な気持ちをひとりで抱え込む必要はありません。

信頼できる人に話してみる、日記やメモに気持ちを書き出してみる、あるいは深呼吸や音楽で気分転換をしてみる。どれも小さな一歩ですが、心に余裕を取り戻すきっかけになります。「こんなことで悩んでいいのだろうか」と思う必要はありません。自分の感情に優しく寄り添うことが、また一歩前に進む力になります。

「嫌われている気がする」自分を責めないで

「嫌われている気がする」という感情は、あなたが人とのつながりを大切に思っている証でもあります。時には不安に押しつぶされそうになるかもしれませんが、その優しさや繊細さを否定する必要はありません。今感じていることも、やがて少しずつ和らいでいきます。自分の心に静かに耳を傾けながら、少しずつ歩んでいけたら、それだけで十分です。

Reference

  • Yang, K., et al. (2018). "Individual differences in social hypersensitivity predict the interpretation of ambiguous feedback and self-esteem." Personality and Individual Differences.

  • Choi Y, et al. (2019). "The relationship between levels of self-esteem and the development of depression in young adults with mild depressive symptoms." Medicine.