Trauma

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大切な人の死に備えるにはどうしたらいい?

by

Takaya Yoshinaka

2025/07/21

ファクトチェック済み

本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。

大切な人との別れを考えることは、誰にとっても重く、避けたいテーマかもしれません。それでも、現実に直面したとき「どう乗り越えればいいのか」「何を準備すればいいのか」と悩む方は多いです。

この記事では、最新の心理学研究をもとに、心の準備や周囲との関係づくりについて一緒に考えていきましょう。

予期的悲嘆とは?

「予期的悲嘆(anticipatory grief)」は、大切な人が亡くなる前から感じる悲しみや不安のことです。最近の研究では、予期的悲嘆を経験することで、実際の喪失後の心理的負担が軽くなる場合があると示されています(La Rovere & Schwartz, 2021)。

悲しみや不安は波のように訪れ、無理に乗り越えようとせず、自然な感情の流れを受け入れることが心の回復に役立つと考えられています。

伝えたい気持ちがあるなら、今、言葉にしてみる

大切な人との最期の時間に、伝えたいことがある方も多いでしょう。誤解を解きたい、感謝を伝えたい、思い出を共有したいなど、その内容は人それぞれです。

「もし相手がもう私の言葉を聞けなくなるとしたら、何を伝えておきたいだろう?」と考えてみてください。気持ちを日記に書き留めたり、手紙にしたりすることで、思いが整理され、後悔を減らすことにつながります。

孤独を感じたら、誰かとつながる練習をしてみる

大切な人の死は、強い孤独感をもたらすことがあります。周囲に人がいても、理解されていないと感じることもあるでしょう。

そんな時は、家族や友人、同じ経験をした人と話すことを意識してみてください。グループカウンセリングなども選択肢です。悲しみや不安を誰かに話す練習をしておくと、実際に大切な人を失った後にも助けを求めやすくなります。

自分をいたわる時間を意識的につくる

大切な人の死を前にすると、心身ともに疲れることが多いです。自分のペースを大切にし、少しでも自分のための時間を作ってみてください。

外に出て人と会う、好きなことをする、フィットネスやヨガ、瞑想なども感情を発散し、心を落ち着かせる助けになります。すべての感情を感じることは自然なことです。悲しみや怒り、耐えられない気持ちも否定せず、受け入れていきましょう。

仕事や日常とのバランスを考える

仕事から少し離れる時間を作ることも考えてみてください。休暇を取って気持ちを整理する時間は、心の健康のためにも重要です。

一方で、日常の生活リズムに戻ることで心の安定を感じる人もいます。何が自分に必要かを、その時々で感じ取ることが大切です。職場の同僚や上司に状況を話しておくことで、必要なときに休憩を取ったり早退したりしやすくなります。

喪失感は波があることを受け入れる

喪失感は人によって異なり、波のように訪れることがあります。日記に感情を書き留めることで、自分の感情のパターンを知る手助けになるかもしれません。

「もう大丈夫にならなければ」と自分を責めず、感情の波を受け入れてください。亡くした人の誕生日など特別な日に喪失感が強くなることも自然なことです。そうした日は前もって予定を立てたり、自分を労わるための特別な何かを計画してみてください。もし喪失感が長く続き、日常生活に支障をきたす場合は、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

あなたのペースで進んで大丈夫です

大切な人の死に備えることは決して簡単ではありません。どれだけ心の準備をしていても、実際に別れが訪れたときに感情が溢れ出すのは自然なことです。

あなたは一人ではありません。同じ経験をしている人は大勢います。自分のペースで進み、必要なサポートを求めることを恥じる必要はありません。大切な人との最後の時間は貴重なものです。その間、自分自身も大切にしながら、今できることを少しずつ行っていきましょう。

Reference

  • La Rovere, M., Schwartz, P. (2021). "Stress, the autonomic nervous system, and sudden death." Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical, 235, 102836.