by
Inner Library Editorial Team
2025/05/08
大切な人やものを失ったとき、心はどこに向かうのでしょうか。今、あなたが感じている喪失感は、決して特別なものではありません。
この記事では、喪失のプロセスを心理学の視点からひも解き、少しでも穏やかに過ごすためのヒントをお伝えします。
喪失を乗り越える心の5つの段階|あなたの感情はどこにいますか?
心理学者エリザベス・キューブラー・ロスは、喪失体験を「否認」「怒り」「取引」「落ち込み」「受容」の5つの段階で説明しました。これは終末期の患者さんの心理から始まった理論ですが、今ではさまざまな喪失に当てはまると考えられています。
ただし、これらの段階は順番通りに進むわけではありません。人によって経験しない段階があったり、何度も行き来することもあります。自分や大切な人の感情を理解するヒントとして参考にしてみてください。
1. 否認 「これは現実じゃない」
突然の喪失に直面すると、まず現実を受け入れられない気持ちになることがあります。例えば、「電話がかかってきて、全部間違いだったと言われるかもしれない」と願ったり、別れた恋人が「やっぱり戻ってくるかもしれない」と考えることもあるでしょう。ショックから心を守るため、一時的に現実から距離を置くのは自然な反応です。
2. 怒り 「なぜこんなことが?」
否認が薄れてくると、怒りが湧いてくることがあります。「なぜ私が?」「何のためにこんなことが起きるの?」と疑問を感じたり、周囲や状況、時には失ったもの自体に怒りを向けることも。怒りの裏には深い痛みがあり、世界と再びつながり始めるサインでもあります。
3. 取引 「もし〜なら」
「もう二度と怒らないから」「毎日努力するから」といった交換条件を考える段階です。コントロールできない状況で、少しでも自分の力で変えたいという希望が生まれます。「あの時こうしていれば」と後悔や自責の念も出てきますが、これも受け入れへのプロセスの一部です。
4. 落ち込み 「何もする気が起きない」
現実と向き合い始めると、深い悲しみや虚無感に包まれることがあります。疲れやすくなったり、集中できなくなったり、食欲がなくなることも。これは「うつ」とは違い、喪失に対する自然な反応です。大切なものを失った後に悲しみを感じることは、むしろ健全な心の動きです。
5. 受容 「これが現実なんだ」
受容は、失ったことを「OK」と思うことではありません。現実を認識し、新しい状況の中でどう生きていくかを考え始める段階です。友人や家族と過ごしたい時もあれば、一人でいたい時もあります。受容に至ったと思っても、また他の段階に戻ることも自然なことです。時間が経つにつれ、受容の状態が長くなり、喪失とともに生きる方法を少しずつ見つけていくでしょう。
喪失と向き合うために
喪失との向き合い方は人それぞれです。この困難な時期を少しでも穏やかに過ごすためのいくつかの考え方をご紹介します。
自分の感情をそのまま認めてみる
どんな感情も「間違い」ではありません。悲しみ・怒り・安堵など、どれもあなたの心が現実と向き合うために生まれたものです。「今はこう感じている」と素直に認めることで、少しずつ心が落ち着いていくでしょう。
自分のペースを大事にする
「もう前を向くべき」と急かす声があっても、回復のタイムラインは人それぞれです。焦らず、自分のペースで感情と向き合うことが、結果的に前進への力につながります。
小さなセルフケアの時間を持つ
十分な睡眠や食事、軽い運動など、基本的なセルフケアは心の回復を支えます。好きな音楽や温かい飲み物など、日常の中に小さな癒しを取り入れてみてください。
誰かとつながる時間を作る
信頼できる人に気持ちを話すことは、心の重さを軽くします。話すのが難しいときは、ただ一緒にいるだけでも構いません。あなたの気持ちを正直に伝えることが、周囲のサポートを受けやすくします。
専門的なサポートを考える
感情の波が強すぎて日常生活が困難な場合は、カウンセリングや支援グループなど専門的な助けを求めることも選択肢です。ひとりで抱え込まないでください。
喪失と向き合う旅は、一人ひとり違います
あなたの心のプロセスは、誰とも同じではありません。大切なのは、自分の感情を否定せず、必要なときはサポートを求めながら、少しずつ前へ進むことです。
今、あなたが感じていることに、どんな意味があるのか。ぜひ、考えてみてください。
Reference
Kübler-Ross, E., & Kessler, D. (2005). On Grief and Grieving: Finding the Meaning of Grief Through the Five Stages of Loss. Scribner.
Stroebe, M., Schut, H., & Boerner, K. (2017). Cautioning against the Dangers of Early Grief Interventions: A Review. Clinical Psychology: Science and Practice, 24(1), 22-32.
Bonanno, G. A. (2009). The Other Side of Sadness: What the New Science of Bereavement Tells Us About Life After Loss. Basic Books.




