相手も自分も大切に『NO』を伝える|後悔しない上手な断り方で人間関係を守る
by
Takaya Yoshinaka
6/9/25
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ファクトチェック済み
本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。
「断ったら申し訳ない」「わがままだと思われそう」と感じることはありませんか?多くの人が、頼まれごとを断ることに不安や罪悪感を抱きます。
これは、相手との関係を大切に思う気持ちがあるからこそ生まれる自然な感情です。しかし、心理学の研究では、私たちは断ることの影響を実際よりも大きく見積もりがちだと示されています。丁寧な「NO」は、思っているほど関係性を損なうものではありません。
断ることの心理学的背景
人は他者からの依頼や誘いを断る際、自分の影響力や相手の反応を過度に心配する傾向があります(Bohns et al., 2014; Flynn & Lake, 2008)。「この程度のことで断るなんて...」「相手を困らせてしまうかも」「関係が壊れてしまったら...」。こうした不安や心配を感じるのは、きっと相手のことを大切に思う気持ちがあるからです。
しかし実際には、率直で思いやりのある断り方は、相手との信頼関係を損なうどころか、むしろ誠実さを伝える機会となります。また、断ることは自己肯定感や心理的健康にも良い影響を与えることが報告されています。自分の気持ちを尊重することで、相手にも誠実な対応ができるようになります。
実践できる「NO」の伝え方
感謝の気持ちを言葉にする
「誘ってくれてありがとう」とまず感謝を伝えることで、相手への敬意が伝わります。断る場面でも、相手の好意を受け止める姿勢が関係性を守ります。
自分の意思をはっきり示す
曖昧な返答ではなく、「今回は難しいです」と率直に伝えることで、誤解や期待のズレを防げます。自分の気持ちを正直に表現することは、相手への誠実さにもつながります。
簡潔な理由を添える
「今週は体調を整えたいので」など、簡単な理由を添えることで、相手も納得しやすくなります。理由は長く説明する必要はありません。
代替案を提案する
「来週ならゆっくり話せます」など、代替案を示すことで、断ることが関係の終わりではないことを伝えられます。相手とのつながりを維持する意志が伝わります。
考える時間をもらう
すぐに返事ができない時は「少し考える時間をいただけますか」と伝えるのも大切です。焦らず自分の気持ちを整理することで、より納得できる選択ができます。
断る前に考えてみたいこと
これを受けることで、自分が大切にしたいことが犠牲にならないか?
引き受けた後、心からその時間を楽しめそうか?
今の自分には、心と時間の余裕があるか?
こうした問いかけを通じて、自分の本音に気づくことができます。自分との対話の時間は、相手に誠実な返事をするための大切なステップです。
断ることは、より良い関係への第一歩
誰かの誘いや依頼を断ることに不安を感じるのは、関係を大切に思う気持ちの表れです。
しかし、時には「NO」と伝えることが、お互いを尊重し合う関係づくりの始まりになることもあります。完璧な断り方を目指す必要はありません。
Reference
Bohns, V. K., Roghanizad, M., & Xu, A. Z. (2014). Underestimating our influence over others' unethical behavior and decisions. Personality and Social Psychology Bulletin, 40(3), 348-362.
Flynn, F. J., & Lake, V. K. B. (2008). If you need help, just ask: Underestimating compliance with direct requests for help. Journal of Personality and Social Psychology, 95(1), 128-143.