ガスライティングに気づく|心の違和感を守るための具体的な対処法
by
Takaya Yoshinaka
2025/08/11
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ファクトチェック済み
本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。
相手の言葉や態度で自分の記憶や気持ちに疑問を持ってしまうことは、誰にでも起こり得ます。
ガスライティングは、気づかないうちに心を揺るがし、自己認識を曇らせてしまうことがあります。なぜこの問題が見過ごされやすいのか、そしてどう対処すればよいのか、心理学の研究をもとに考えてみましょう。
ガスライティングとは?
「それ、あなたの思い込みじゃないの?」 「そんなに深く考えなくていいのに」 「私はあなたのことを思って言ってるのに」
こうした言葉、どこかで聞いたことはありませんか。一見すると相手を気遣っているように聞こえるこれらの言葉が、実は私たちの心を少しずつ蝕んでいくことがあります。
ガスライティングとは、相手の記憶や判断、感情を意図的に否定したり、コントロールしたりすることで、認識を歪ませる心理的な影響を指します。
なぜ気づきにくい? 心理学が示すガスライティングの特徴
ガスライティングは、繰り返されることで徐々に自己疑念や不安を強めていきます。
Sweet(2019)の研究によれば、親しい関係や権力差のある場面では、影響が深刻になりやすいことが指摘されています。またAhern(2018)は、長期的な心理的ダメージや自己否定の傾向が生まれやすいと述べています。違和感を覚えたとき、その感覚を無視せず大切にすることが重要です。
ガスライティングが心や行動に与える影響
ガスライティングが続くと、「自分の判断が正しいのか不安になる」「小さな決断でも他人の確認を求めてしまう」「感情表現に自信が持てなくなる」などの変化が現れます。こうした影響は一時的なものではなく、自己否定的な思考や人間関係への不安として長く残ることもあります。
心を守るための具体的なアクション
1. 違和感や出来事を記録する
「何かおかしい」と感じた出来事や会話、その時の気持ち・体の反応を、日付や状況と一緒に書き留めてみてください。記録することで、自分の感覚を客観的に見直す手助けになります。
2. 信頼できる人に相談する
家族や友人、カウンセラーなど、信頼できる相手に話してみましょう。話すことで状況が整理され、自分の感覚を再確認しやすくなります。
3. 自分への思いやりを持つ
「友人だったらどんな言葉をかけるか」と考えてみたり、好きなことをする時間を意識的に作るなど、自分をいたわる行動を心がけてください。
4. 境界線を意識して伝える
無理な要求には「今日は難しいです」と伝える、必要以上の謝罪を控えるなど、小さな「NO」を積み重ねることも大切です。
5. 必要に応じて距離を取る
可能な範囲で接触を減らしたり、一人で過ごす時間を確保することで、心の余裕を作ることができます。
あなたの違和感に耳を傾けてみませんか?
ガスライティングの影響は気づきにくく、長く心に残ることがあります。まずは自分の感覚を信じ、小さな行動から始めてみてください。どんな場面で「おかしい」と感じるか、その感覚をこれからも大切にしていきましょう。
Reference
Ahern, K. (2018). Institutional betrayal and gaslighting: Why whistle-blowers are so traumatized. The Journal of Perinatal & Neonatal Nursing, 32(1), 59-65.
Sweet, P. L. (2019). The Sociology of Gaslighting. American Sociological Review, 84(5), 851-875.