Trauma
トラウマとは何か?心が抱えた深い傷と向き合うとき。
心が抱えきれない経験をした後の反応は、決して異常なことではありません。この記事では、トラウマという言葉の本当の意味を理解し、回復に向けた一歩を探るヒントをお伝えします。
by
Takaya Yoshinaka
2024/12/08
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あなたの心と体が示すサインに、少しずつ耳を傾けていく
私たちの人生には、時として心が抱えきれないほどの出来事が起こることがあります。それは、大きな事故や災害かもしれませんし、身近な人との別れかもしれません。あるいは、日常の中で積み重なった小さな傷つきかもしれません。
そうした経験の後、心や体にさまざまな変化が現れるのは、とても自然なことです。それは、あなたが「おかしい」わけでも、「弱い」わけでもありません。むしろ、心が自分を守ろうとする大切なサインかもしれないのです。
私たちの心が経験するトラウマとは
トラウマという言葉を聞くと、重大な事故や災害など、特別な出来事だけを思い浮かべるかもしれません。しかし、その人にとって対処が難しい経験であれば、それはトラウマとなる可能性があります。
世界的なトラウマ研究の第一人者であるベッセル・ヴァン・デア・コーク博士は、トラウマを「圧倒的な出来事によって引き起こされる、心と体の防衛システムが活性化された状態」と説明しています。それは私たちの心と体が自己を守ろうとする、自然な反応なのです。
心はどのように反応するのか
トラウマを経験した後、私たちの心はさまざまな形で反応を示すことがあります。
記憶や感覚の変化
突然、その時の記憶が蘇ってくる
夜、怖い夢を見て目が覚める
まるでその時に戻ったような感覚になる
予期せぬ瞬間に心臓がドキドキする
日常生活での変化
特定の場所や状況を避けるようになる
これまで楽しめていたことが楽しめない
人との関わりが怖くなる
些細なことでも強い不安を感じる
からだも私たちに語りかける
トラウマの影響は、心だけでなく、体にも現れることがあります。
睡眠の変化
寝つきが悪くなる
夜中に何度も目が覚める
朝早く目が覚めてしまう
十分に眠れても疲れが取れない感覚
からだの不調
原因のわからない頭痛
胸の締め付け感
胃腸の不調
急な動悸や呼吸の乱れ
理解することから、向き合うことへ
これらの反応を理解することは、回復への重要な一歩です。そして、その過程には以下のようなアプローチが助けとなることがあります:
安全な環境をつくる
信頼できる人との時間を持つ
心地よい場所や空間を見つける
自分のペースを大切にする
専門家のサポート
カウンセリングで自分の体験を整理する
からだの反応への対処法を学ぶ
必要に応じて医療機関を受診する
日常生活でのケア
できるだけ規則正しい生活を心がける
好きな音楽を聴いたり、読書をしたりする
軽い運動や散歩を取り入れる
これからの時間のために
トラウマからの回復には、一人ひとり異なる時間が必要です。良い時もあれば、しんどい時もあるでしょう。それは自然な過程の一部です。
大切なのは、自分の感じていることを「間違っている」と否定しないこと。そして、一人で抱え込む必要はないということを覚えておくことです。
必要な時に、必要なサポートを受けることは、回復への大切な一歩となります。それはあなたにとって、これからの時間をより良く生きていくための選択となるかもしれません。
Van der Kolk, B. (2014). The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma. Viking.
Herman, J. L. (2015). Trauma and Recovery: The Aftermath of Violence--From Domestic Abuse to Political Terror. Basic Books.
安克昌 (2023).『トラウマの理解と回復への道のり:心理臨床の現場から』誠信書房.
Trauma