Trauma

大切な人の死に備えるにはどうしたらいい?

大切な人の死を前にして、私たちは何ができるのでしょうか?この記事では、予期的悲嘆という概念と向き合いながら、心の準備や周囲との関係づくりなど、今からできることについて一緒に考えていきましょう。

by

Takaya Yoshinaka

2025/03/21

ファクトチェック済み

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本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。

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大切な人が残されている時間の中で

大切な人の死は想像するだけでも辛いものです。悲しみ、喪失感、孤独感、時には怒りを感じます。死を前にすると複雑な感情が生まれ、受け入れるのはとても困難です。しかし、あらかじめ心の準備をしておくことで、その時が来たときの苦しさを少しでも和らげられるかもしれません。

「予期的悲嘆」は、大切な人との別れが近づいていることを知った時から始まる心の動きです。死別の前から悲しみや不安を感じることは珍しくありません。

研究によれば、予期的悲嘆の過程では多くの人が孤独感を抱きやすいと言われています。まだ別れが訪れていないため、周りからの理解を得にくく、ひとりで抱え込んでしまうことがあるのです。

心の準備をしておくことで、その時が来たときの苦しさを少しでも和らげられるかもしれません。何かをすることで、自分ではどうすることもできないと感じる時期に、少しでも心の支えになることもあるでしょう。

今からできることをいくつか見ていきましょう。

1. 伝えたいことを考えてみる

大切な人との最期の時間をどう過ごすかは、人それぞれの選択があります。中には長年の誤解を解いて関係を修復したいと思う人もいるでしょう。また、共有したい思い出や感謝の気持ちを伝えたいと考える人もいます。

どんな形であれ、大切な人に伝えたいことがあるなら、それを伝える時間を作ることが大切です。

「もし相手がもう私の言葉を聞けなくなるとしたら、何を伝えておきたいだろう?」と考えてみましょう。その思いを日記に書き留めたり、声に出して言ってみたりすると、伝えたいことが明確になるかもしれません。

難しいかもしれませんが、できるだけ早くその気持ちを伝える機会を作ってみてください。会話をするのが難しければ、手紙を書くのも良いでしょう。

2. 周りの人とつながる

大切な人の死は非常に孤独を感じるものです。大勢の人に囲まれていても、誰にも理解されていないと感じることがあります。

そんな時は周りからの支えを受け入れる姿勢を持つことが大切です。家族や友人に気持ちを打ち明けるのは勇気がいるかもしれませんが、同じ経験をした人の話を聞いたり、自分の気持ちを分かち合ったりすることで、心が少し軽くなることもあります。

悲しみや不安を誰かに話す練習をしておくと、実際に大切な人を失った後にも、必要なときに助けを求めやすくなります。一人で抱え込まないことが、この困難な時期を乗り越える大きな力になります。

もし身近に話せる人がいない場合は、グループカウンセリングなど、同じような経験をしている人々が集まる場に参加することも検討してみてください。

3. 自分自身をケアする時間を作る

大切な人の死を前にすると心身ともに疲れるものです。自分のペースを大切にし、自分の感情と向き合い、自分のための時間を作ることも重要です。

毎日少しでも、自分をケアする時間を意識的に作ってみましょう。それは15分程度の短い時間でも構いません。

辛い気持ちを抱えていても、外出して人と会ったり、好きなことをしたりすることも大切です。フィットネスやヨガ、瞑想などの活動は、感情を発散し、心を落ち着かせるのに役立つことがあります。

すべての感情を感じることは、このプロセスの自然な一部です。悲しみも、怒りも、時には耐えられないと感じる気持ちも、すべて受け入れていきましょう。

4. 仕事との向き合い方を考える

仕事から少し離れる時間を作ることも考えてみましょう。休暇を取って気持ちを整理する時間を持つことは、心の健康のために大切なことです。

一方で、日常の生活リズムに戻ることで心の安定を感じる人もいます。辛い日々を過ごしているときに、仕事や日常の習慣が支えになることもあるのです。

これらに関して正解はありません。自分自身と向き合い、その時々で何が自分に必要かを感じ取ることが大切です。

もし可能であれば、職場の同僚や上司に状況を話しておくことも検討してみてください。理解を得ておくことで、必要なときに休憩を取ったり、早退したりすることへの心理的なハードルが下がります。

5. 喪失感について知る

喪失感は人によって異なる形で現れます。波のように訪れることもあり、時間とともに形を変えていくものです。一度経験すると、完全になくなることはなく、人生の一部として共に歩んでいくものかもしれません。

喪失感をよりよく理解するために、以下のことを試してみるのも良いでしょう。

  • 自分の感情を日記に書き留める。どんな時に強い感情が湧くのか、パターンを見つけることができるかもしれません。

  • 悲しみを感じる権利を自分に与える。「もう大丈夫にならなければ」と自分を責めず、感情の波を受け入れましょう。

喪失感は時に、亡くした人の誕生日などの特別な日に強く戻ってくることがあります。これは自然なことです。こうした日には前もって予定を立て、大切な人との思い出を振り返る時間を作ったり、自分を労わるための特別な何かを計画しておくと良いでしょう。

喪失感が長く続き、日常生活に支障をきたすようであれば、専門家のサポートを受けることも検討してみてください。特に自殺念慮や自傷念慮、長く続く希望のなさや無気力、故人への強い思慕や執着などの症状が現れたら、無理せず専門家に相談してみましょう。

あなたのペースで大丈夫です

大切な人の死に備えることは決して簡単ではありません。そして、どれだけ心の準備をしていても、実際に別れが訪れたときに感情が溢れ出すことは自然なことです。

あなたは一人ではありません。同じような経験をしている人々は大勢います。家族や友人と話すのが難しいと感じる場合は、グループカウンセリングに参加することも検討してみてください。

自分のペースで進み、必要なサポートを求めることを恐れないでください。大切な人との最後の時間は貴重なものです。その間、自分自身も大切にしながら、今できることを少しずつ行っていきましょう。

References

References

  • La Rovere, M., Schwartz, P. (2021). "Stress, the autonomic nervous system, and sudden death." Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical, 235, 102836.

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