Trauma
大切な人を失う不安に囚われたら。心理学者が教える心の処方箋。
大切な人を失うことへの不安は、誰もが経験する自然な感情です。この記事では、見捨てられ不安の本質を理解し、自分らしい付き合い方を見つけるためのヒントをお伝えします。
by
Takaya Yoshinaka
2024/12/05
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「この人も離れていってしまうかもしれない」そんな不安と生きる私たちへ
誰かを失うことへの不安は、私たち誰もが経験する自然な感情です。時として、その不安は私たちの心を深く揺さぶり、大切な関係性にも影響を与えることがあります。
見捨てられ不安とは
見捨てられ不安とは、家族や恋人など親しい人から見捨てられることを過剰に恐れる心理状態です。分離不安とも呼ばれ、児童精神科医のマーガレット・S・マーラーが1975年に提唱した用語です。
誰かを失うことへの恐れは自然な感情ですが、見捨てられる明確な理由がないにもかかわらず、持続的な不安を感じる場合、それは見捨てられ不安かもしれません。
見捨てられ不安が引き起こす問題
見捨てられ不安は、以下のような形で私たちの生活に影響を与えることがあります:
他者への過度な依存やしがみつき
関係性における過剰な要求や確認行動
一人でいることへの強い不安
些細な出来事でも見捨てられたと感じてしまう
自傷行為や破壊的な行動
見捨てられ不安の背景にあるもの
私たちの不安には、それぞれの物語があります。その背景を理解することは、自分自身を理解する第一歩となるかもしれません。
1. 幼少期の経験
養育者との不安定な関係
重要な他者との別れの経験
情緒的なネグレクトの経験
2. 愛着の問題
不安定な愛着スタイル
特に不安型愛着障害との関連
安全な関係性を築く経験の不足
3. 関連する精神疾患
境界性パーソナリティ障害
全般性不安障害
うつ病
向き合い方のヒント
不安と向き合うことは簡単ではありませんが、一歩ずつ自分のペースで進んでいくことが大切です。
自己理解を深める
自分の感情パターンの観察
不安が強まる状況の記録
過去の経験との関連を探る
専門家のサポート
心理カウンセリング
認知行動療法
必要に応じた薬物療法
日常生活での工夫
リラックス法の習得
支援的な人間関係の構築
自己ケアの習慣化
不安と共に歩む、これからの一歩のために
見捨てられ不安は、私たちの人生や関係性に深く影響を与えることがあります。しかし、それは決して「克服すべき問題」ではありません。むしろ、この感情は自己理解を深め、より豊かな関係性を築くためのきっかけとなるかもしれません。
大切なのは、この不安を抱える自分を責めすぎないこと。そして、必要に応じて専門家のサポートを受けることも含めて、自分らしい向き合い方を少しずつ見つけていくことです。それぞれの歩みに、正しい速さはありません。あなたのペースで、あなたなりの道を見つけていってください。
Mahler, M. S. (1975). The psychological birth of the human infant.
American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.).
Bowlby, J. (1988). A secure base: Parent-child attachment and healthy human development.
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