Sex & Love
生物学的性別とジェンダーの違いとは?
多くの人が性別を単純に「男性」と「女性」の二つに分けて考えがちですが、実際には生物学的性別とジェンダーには大きな違いがあります。多様な性のあり方を理解し、自分らしく生きるためには、どのような視点が必要なのでしょうか?
by
Takaya Yoshinaka
4/21/25
✓
身体とこころの間にある、自分らしさへの探求
多くの人にとって、性別は「男性」か「女性」かのどちらかという単純な区分に思えるでしょう。特に、生まれた時に与えられた性別に違和感がない場合は、性別について深く考える必要性をあまり感じないかもしれません。
しかし、世界には様々な性のあり方があります。生まれながらの身体の特徴(生物学的性別)と、自分自身が感じる性別(ジェンダーアイデンティティ)が一致しない人もいます。性の多様性を理解することは、自分自身や他者をより深く尊重することにつながります。
生物学的性別とは?その複雑さを理解する
生物学的性別は、主に身体的な特徴によって定義される性別です。一般的に「男性」と「女性」の二つに分類されますが、実際にはそれほど単純ではありません。
生物学的性別を構成する主な要素には、以下のようなものがあります。
染色体の組み合わせ(XYやXXなど)
生殖器の形状
ホルモンのバランス
第二次性徴の発達状況
これらの要素は通常は一致しますが、必ずしもそうとは限りません。例えば、性分化疾患(DSD)と呼ばれる状態がある人は、これらの特徴が典型的な「男性」「女性」のどちらにも完全には当てはまらないことがあります。
約100人に1人がなんらかの性分化疾患を持って生まれるといわれています。このことからも、生物学的性別が単純な二分法では説明できない複雑なものであることがわかります。
ジェンダーとは?社会的・心理的な性別
ジェンダーとは、自分自身がどのような性別だと感じるか(ジェンダーアイデンティティ)、そして社会的にどのように性別を表現するか(ジェンダー表現)に関わる概念です。
生物学的性別が主に身体的特徴に関するものであるのに対し、ジェンダーは心理的、社会的、文化的な側面を持っています。簡単に言えば、「自分はどのような性別だと感じるか」「自分はどのように性別を表現したいか」ということです。
私たちの社会では一般的に、生まれたときに与えられた性別と自分が感じる性別が一致している「シスジェンダー」の人が多数派です。
一方で、生まれたときに与えられた性別と異なる性別を自認する人を「トランスジェンダー」と呼びます。また、自分を男性でも女性でもないと感じる「ノンバイナリー」の人もいます。
ジェンダーは「男性か女性か」という単純な区分ではなく、むしろ連続的な幅のある概念として理解できます。この視点から見ると、ジェンダーの多様性は人間の自然な姿の一部として理解できます。
ジェンダーアイデンティティと表現の違い
ジェンダーアイデンティティとは、自分自身がどのような性別であるかという内的な認識です。これに対して、ジェンダー表現とは、自分のジェンダーを外見や行動を通じてどのように表現するかということです。
例えば、自分を女性と認識している人でも、社会的に「男性的」とされる服装や振る舞いを好む場合があります。あるいは、自分を男性と認識している人が、「女性的」とされるファッションや趣味を楽しむこともあります。
大切なのは、ジェンダー表現はジェンダーアイデンティティとは異なるものだということです。また、これらは必ずしも性的指向(誰に恋愛感情や性的魅力を感じるか)とも関連しません。
「男性的」な表現をする女性が必ずしもレズビアンであるとは限りませんし、「女性的」な表現をする男性が必ずしもゲイであるとは限りません。
ジェンダー表現は個人の自己表現の一部です。社会的な期待や規範に関わらず、それぞれの人が自分らしい表現を選択できることが大切です。
性的指向とジェンダーの関係
性的指向とは、自分がどのような性別の人に恋愛感情や性的魅力を感じるかということです。これはジェンダーアイデンティティや生物学的性別とは別の概念です。
よくある誤解として、トランスジェンダーの人が「異性愛者になるため」に性別を移行するという考えがあります。しかし、これは事実ではありません。トランスジェンダーの人の性的指向は多様であり、異性愛者、同性愛者、両性愛者など様々です。
かつては、「トランスジェンダー」という概念があまり知られていなかったため、多くの人が自分のジェンダーアイデンティティを理解するために、性的指向という概念を通じて理解しようとしていました。
しかし現在では、ジェンダーと性的指向は別々の概念として理解されています。ジェンダーアイデンティティは「自分は誰か」という問いであり、性的指向は「誰に惹かれるか」という問いです。
あなたらしさを尊重するために
性別やジェンダーは、私たちが思っているよりもずっと多様で豊かなものです。生物学的な性別と自分が感じるジェンダーは必ずしも一致するとは限りません。そして、それは自然なことです。
他者と関わる際には、先入観を持たずに相手のアイデンティティを尊重してみましょう。自分自身のジェンダーについて考えるときも、社会的な期待や規範にとらわれず、自分がどう感じるか、どのように表現したいかを考えてみることが、より自分らしく生きることにつながります。
あなたの性別やジェンダーは、あなただけのものです。どんな道を選んでも、それはあなたらしい生き方です。自分の心に正直に、自分のペースで歩んでいきましょう。
Heidari, S., Babor, T.F., De Castro, P. et al. (2016). "Sex and Gender Equity in Research: rationale for the SAGER guidelines and recommended use." Research Integrity and Peer Review, 1(2). https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41073-016-0007-6
Schiebinger, L., Leopold, S.S., & Miller, V.M. (2016). "Editorial policies for sex and gender analysis." The Lancet, 388(10062), 2841-2842. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(16)32392-3
Sex & Love