Sex & Love

セックスは恥ずかしいこと?恥の感情がメンタルヘルスに与える影響

手をつなぐことはできるのに、パートナーとセックスについて話すとき、なぜ恥ずかしさを感じるのでしょうか?セックスに関する恥の感情は、私たちの心の健康や人間関係に影響します。この感情とどう向き合えばよいのでしょうか?

by

Takaya Yoshinaka

3/4/25

ファクトチェック済み

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本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。

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恥の感情はどこから生まれる?

「こうして欲しい」という性的な希望を伝えることに躊躇したことはありませんか。または、周りからどう見られるかを気にして、自分の性的な気持ちを打ち明けられずにいた経験はないでしょうか。

このような感情は珍しいものではなく、多くの人が経験しています。性的な欲求に対する恥の感情は、私たちが育った環境や社会の影響から生まれています。そして、この感情は私たちの心と体に大きな影響を与えているのです。

この記事では、セックスに関する恥の感情がどこから来るのかを見ていきます。また、この感情が心の健康にどのように影響し、自分のセクシュアリティを素直に受け入れるためにはどうすればよいのか、心理学の視点からお伝えします。

セックスと恥の感情が結びつく背景

私たちの社会には、セックスや性的な欲求に対する様々な考え方や期待があります。これらは家庭や学校、メディアなどを通じて私たちに伝えられます。こうした社会的な期待は、私たち自身が感じている自然な気持ちと食い違うことがあります。

例えば、性について家族と話し合ったことがないと、それは「話してはいけないこと」という暗黙のメッセージを受け取ることになります。また、学校で受ける性教育が「危険」や「リスク」を強調するものだった場合、セックスを肯定的に捉えることが難しくなるかもしれません。

性別によって異なる社会的期待

私たちは多くの文化で、セックスは男女で異なる扱いを受けてきました。

まず女性には「控えめであるべき」「純潔を守るべき」という期待がかけられることが多い傾向があります。こうした考え方は、女性が自分の性的欲求を素直に表現することを難しくします。「良い女性」として見られたいという気持ちが、自分の欲求を抑え込むことにつながります。

一方、男性には「積極的であるべき」「経験豊富であるべき」という別の期待がかけられます。こうした期待は、自分のペースで性と向き合いたい男性にとってプレッシャーとなります。また、感情面を重視したい男性が、そうした気持ちを表現しにくい環境を作り出すこともあります。

セックスに対する恥の感情がメンタルヘルスに与える影響

私たちの心と体は密接につながっています。セックスに関する恥の感情は、心の健康に様々な影響を与えます。

恥の感情があると、自分の欲求や感情を素直に表現することが難しくなります。そしてパートナーとの関係の悪化につながる場合もあります。また、恥の感情によって必要な医療やケアを避けてしまうこともあります。性病の検査を受けることや、性について医師に相談することに抵抗を感じる人は少なくありません。

2020年の研究によると、過去18年間でアメリカの成人のセックスの頻度が減少していることが明らかになりました。研究者たちは、うつや不安の増加がこの減少と関連している可能性を指摘しています。

ブレネー・ブラウンの恥の回復力理論

恥の研究者ブレネー・ブラウンは、「恥の回復力理論」を提唱しています。この理論では、恥を「自分は欠陥があり、受け入れられない、価値がないと感じる、苦痛で普遍的な経験」と定義しています。

ブラウンによれば、恥は私たちが社会的な期待に応えられないと感じるときに生じます。性に関する考えや行動は、こうした恥が生じやすい分野の一つです。特に以下のような場面で恥の感情が強まりやすいとされています。

  • 自分の体や外見について

  • 性的な欲求や好みについて

  • パートナーとの性的な関係について

  • 過去の性的経験について

恥の感情に対して回復力を持つためには、この感情を認識し、他者とつながり、恥の源となる考え方に疑問を投げかけることが重要だとブラウンは説明しています。

自分の性的欲求を受け入れる方法

セックスに関する恥の感情は広く見られるものですが、その影響を減らし、自分の性的欲求をより健康的に受け入れる方法があります。

自分の思いを書き留める

自分の考えや感情を書き出すことは、それらを整理し理解するのに役立ちます。日記をつけることは、恥の感情と向き合うための安全な方法の一つです。

書く際は、判断せずに正直に自分の気持ちを表現してみましょう。「なぜこの状況で恥ずかしさを感じたのか」「その感情はどこから来ているのか」などを探ることで、自分の感情の根源に気づくことができます。

自分自身を知る

自分の体を理解することは、性的な欲求を受け入れる大切なステップです。

自分の体について学ぶことで、何が気持ちよく、何がそうでないかを知ることができます。これは自慰行為を通じてもできますし、単に鏡で自分の体を見ることからも始められます。

また、自分がリラックスできる環境や状況、自分を安心させるものを理解することは、健康的な性関係を築く基盤となります。

オープンな対話を持つ

信頼できるパートナーや友人と、セックスや性的な気持ちについて率直に話すことは、恥の感情を減らすのに役立ちます。

会話を始める際は、まずお互いが安心して話せる雰囲気を作ることが大切です。パートナーとは「私の好きなこと、あなたの好きなことについて話してみない?」というように、肯定的な方向から会話を始めるといいでしょう。

こうした対話は、自分だけが悩んでいるわけではないことを知る機会にもなります。共感を通じて、「自分だけではない」という安心感を得ることができます。

専門家のサポートを得る

セックスに関する恥の感情が日常生活や人間関係に大きな影響を与えている場合は、専門家のサポートを求めることも選択肢の一つです。

性の問題を専門とするカウンセラーは、こうした悩みに対応する知識を持っています。彼らは判断せずに話を聞き、あなたが恥の感情を克服するための具体的な方法を提案してくれます。

「普通」という概念から自由になるために

セックスに関する恥の感情を減らす上で最も重要なのは、「普通」や「あるべき姿」という概念から自由になることかもしれません。

私たちは一人ひとり異なる存在です。性的な好みや欲求、表現方法も多様です。「普通」と思われることを追求するのではなく、自分にとって心地よく、健康的で、お互いの同意に基づいた性生活を探求することが大切です。

日常の小さな実践として、自分の体や性的な気持ちについて肯定的な言葉を使ってみましょう。また、社会の描く「理想的な」セックスや体の姿に疑問を投げかけることも重要です。

何よりも、完璧を目指す必要はありません。自分自身と、自分の性に対する考え方は、一生続くプロセスです。少しずつ、自分のペースで進んでいくことを大切にしましょう。

References

References

  • Brown, B. (2006). Shame resilience theory: A grounded theory study on women and shame. Families in Society, 87(1), 43-52.

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