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「完了不安」を知っていますか?仕事や課題が最後まで終われない理由

締め切りが近づくのに最後の一歩が踏み出せない。そんな経験をしたことはありませんか?この記事では、完了不安という視点から、なぜ私たちが物事を終えることに躊躇を感じるのか、その理由と向き合い方をお伝えします。

by

Takaya Yoshinaka

2025/01/31

ファクトチェック済み

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本記事は査読付き学術論文および実証研究に基づいています。

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完璧を目指すからこそ、最後の一歩が重くなる

締め切りまであと少し。やるべきことはほとんど終わっているのに、なぜか最後の一歩が踏み出せない。そんな経験をしたことはありませんか。特に、いつも丁寧に仕事をする人、完璧を目指す人ほど、この「終われない」という感覚に悩まされることが多いようです。

実は、これには「完了不安」という心理が関係しているかもしれません。完了不安とは、タスクを完了させることへの不安や恐れのこと。研究によれば、この感覚は決して特別なものではなく、むしろ、より良い結果を求める私たちの自然な心の動きの一つだと考えられています。

この記事では、なぜ私たちが物事を「終える」ことに躊躇を感じるのか、その心理的なメカニズムと、自分のペースで前に進むためのヒントをお伝えしていきます。

なぜ私たちは「終える」ことに不安を感じるのか

完了不安が起きるとき、私たちの心の中では複雑な感情が交錯しています。締め切りは迫っているのに、どこかブレーキがかかってしまう。それは単なる「先延ばし」とは異なる、もっと深い心理が働いているのかもしれません。

研究によれば、完了不安の背景には、主に次のような心理が隠れていることがわかっています。

評価への不安 - 完璧を目指すことの両面性

より良いものを作り上げたい。そんな思いが強ければ強いほど、かえって最後の一歩が踏み出せなくなることがあります。これは、完璧主義的な傾向を持つ人によく見られる特徴です。

完璧を目指す姿勢は、質の高い成果を生み出すための原動力となります。しかし、その一方で、「これで十分か」という不安が強くなりすぎると、かえって前に進めなくなってしまうことがあるのです。

「終わり」がもたらす不確実性との向き合い

タスクを終えることは、新しい段階への移行を意味します。そこには必ず、評価や次の課題という不確実な要素が待っています。心理学の研究では、この「次に何が起こるかわからない」という不確実性が、私たちの不安を高める大きな要因になっていることが指摘されています。

完了不安との向き合い方

1. 「十分さ」を再定義する

完璧な成果物というものは、実は存在しないのかもしれません。大切なのは、その時点での「十分さ」を見極めることです。以下のような問いかけを自分にしてみるのも良いでしょう。

  • この成果は、求められている要件を満たしているか

  • 現時点での自分の力を出し切れているか

  • これ以上の改善に、本当に意味があるか

例えば、プレゼンテーション資料の作成であれば、「相手に伝えたい内容は明確に表現できているか」「視覚的な要素は適切に使用できているか」といった具体的な基準で考えてみましょう。完璧を目指すあまり、本質的な価値が失われてしまうことは避けましょう。

2. 小さなステップで進む

大きな課題を前にすると、どうしても完璧を求めてしまいがちです。そんなとき、以下のようなアプローチが効果的かもしれません。

  • 成果物を小さな単位に分割する

  • それぞれに締め切りを設定する

  • 一つずつ「完了」を体験する

例えば、レポート作成であれば、「アウトライン作成」「資料収集」「下書き」「推敲」といった具合に分けていくことができます。この方法では、小さな達成感を積み重ねることで、完了に対する不安を少しずつ和らげていくことができます。

3. 「終わり」を別の視点で捉える

完了は「終わり」であると同時に、新しい始まりでもあります。評価を受けることで、次の成長のヒントを得られるかもしれません。また、一つのタスクを終えることで、新しいチャレンジに向かうエネルギーが生まれることでしょう。

完了不安から学ぶこと

完了不安は、必ずしもネガティブな感情ではありません。むしろ、より良いものを作り出したいという私たちの意欲の表れかもしれません。大切なのは、この感情と上手に付き合いながら、一歩ずつ前に進んでいくこと。

すべての物事には終わりが必要です。しかし、その「終わり」は完璧である必要はありません。それは次の成長への大切な一歩なのかもしれません。

References

References

  • Ferrari, J. (2010). Psychology of procrastination: Why people put off important tasks until the last minute. American Psychological Association.

  • Henriksen, I., et al. (2017). The role of self-esteem in the development of psychiatric problems: A three-year prospective study in a clinical sample of adolescents. Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health.

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